Answer Song ヲオクレヨ

2020年12月10日

「お前の中にある炎を絶やすな」と、いつかどこかで他ならぬジョー・ストラマーが云っていたというそれだけで自分の中の炎を絶やさないよう心掛けて生きてる。別に何をするわけでもない。ただ時々あの素晴らしき酔っ払いの言葉を思い出して、『London Calling』のCDをいつもよりも少し大きくかける。それか自分でギターを弾きながら謳う。パンクの嫌いな家族たちの白々とした顔をを見てから、よし大丈夫、俺の中にそれはまだ確かにある、とそう思うだけの話だ。「炎」とは何か?ハハ、さあ、何なんでしょう。
 他にも頭の片隅から語りかけてきて自分を深いところでさりげなく規定して人生に影響を与えている言葉がある。面白いのもあるし面白くないのもある。厳しいのもあるし優しいのもある。「男らしくあれ」とか「カッコ良くあれ」とか、面白くない方の言葉はいつどこで誰から吹き込まれたのか分からないのが多い。そんなのは無くたってちっとも構わないのだけれど…。

「この星に飢えて死ぬ子供や虐げられて泣いている人間が存在する限り、わたしは「幸福」という言葉に用はない」

 これはたぶんアイルランドの作家ジョージ・バーナード・ショーの言葉。カート・ヴォネガットの『ジェイルバード』という小説の中で見つけた気がしていたが、今回探してみてそんな件りはなかった。ネットで検索を掛けてみてもやはり出てこなかった。まあいい。自分がこの言葉に相応しいなんてもちろん思ってない。ただ、時折彼がそう語りかけてきて、わたしは神妙にその言葉を聞く。そして、そんなに立派には生きられないけれど、「だからせめて汚い真似はやめようじゃないか(RCサクセション『やさしさ』より)」とか思うのである。そう云えば、カート・ヴォネガットの『ジェイルバード』にはこんな優しいセリフだってある。

「もういいのよ」彼女はいった。「ハートを持たずに生まれてきたのは、あなたのせいじゃないわ。すくなくともあなたは、ハートを持った人たちが信じていたことを、信じようとしたーだから、あなたもやっぱりいい人なのよ」
 彼女は呼吸をやめた。まばたきもやめた。彼女は死んだ。

 
 流行り物にはできるだけ近づかないようにしてる。
 だって流行ってる物なんてくだらないもの。みんながいいって云う物なんてくだらないもの。どうも頭ごなしにそう信じてる感がある。根拠とか確信とかがあるわけじゃあない。そんなのは間違った考え方だよね、とも思う。でもまあ、わたしなんかが理由もなく流行り物を拒否したからって誰かが傷つくでも悲しむものでもないんで、もしかしたら自分が損するってだけの話なら、得するために生きてるわけじゃないからやはり反省もなく流行り物には鼻も引っ掛けない。コロナにも近づかないし、鬼退治にも興味ない。しかし困ったことに、ある種のものは向こうの方から「こんにちわ」とか云って近寄ってくるのである。
 晩秋の晴れた昼下がり、町外れの書庫へ、いまやラジオしかかからないポンコツ車を走らせていると例のあの「どるちえガッパーながどうした」とか云う歌が流れてきた。変えるのも面倒臭いからそのまま聴いたら思いの外いい曲で、無情に澄み渡った秋の空をフロントグラスの向こうに見ながら不覚にも涙がチョチョ切れた。もっと違う感じの歌だと思ってた。君が好きだよ〜、でも君は素敵すぎて僕の手は届かないよ〜、的なありふれた歌だと思ってたんだけどどうもね、そんなんじゃないね。
(わたしが勝手に思うに)『香水』は大人になろうとしている自分の姿に慄いている青年の唄だ。彼は自分の中からそれまであった輝き、「炎」がジワジワと消え去ってゆく瞬間に直面してる。そしてそれを自分が事もなく受け入れるであろうことを予感している。平凡で過酷な人生を皆と同じように自分も生きてゆかねばならない。そのために何かをいまここで葬り、それを淋しく哀しく思った今日を、いずれなかったことのように忘れてしまうだろうことを確信している。かつて愛した女はもうそこにはいない。彼女の姿形はそのままだとしても、もはや彼女は彼を救ってはくれない。何故なら彼は変わってしまったから。たぶん彼女も変わってしまったから。いまこの瞬間に彼が感じているすべての尊い思いは消え去る。香水の微かな香りとともに。
 こういう見事に哀しい唄をちゃんとヒットさせてしまう若者に対して、僭越ながら、現代を生きる大人としてanswer songを送らねばと強く思うのである。
 
 これはどうかな。

「Still crazy after all these years」Paul Simon

I met my old lover
On the street last night
She seemed so glad to see me
I just smiled
And we talked about some old times
And we drank ourselves some beers
Still crazy after all these years
Oh, still crazy after all these years

I’m not the kind of man
Who tends to socialize
I seem to lean on old familiar ways
And I ain’t no fool for love songs
That whisper in my ears
Still crazy after all these years
Oh, still crazy after all these years

Four in the morning
Crapped out
Yawning
Longing my life away
I’ll never worry
Why should I?
It’s all gonna fade

Now I sit by my window
And I watch the cars
I fear I’ll do some damage
One fine day
But I would not be convicted
By a jury of my peers
Oh, still Crazy
Still Crazy
Still Crazy after all these years

 本当はこんな昔の唄じゃなくいまを生きる大人が、彼らの思いに応える唄を何が何でも力ずくで捻り出して世に出して欲しい。ヒットさせて欲しい。好きだからブルース・スプリングスティーンとAC/DCの新譜にも当たってみるけど、あいつらじゃダメだろうなぁ。あいつらの「炎」は消防隊が365日放水し続けても消えそうにないもの。そんな山火事みたいな連中に『香水』の主人公の微妙な心持はわからんよね。世界最高齢ラッパーの坂上弘先生辺りならあるいは応えてくれそうだけどなァ。先生今年引退しちゃったしなぁ。別にミュージシャンじゃなくったっていいんだけどね。わたしでもいいってことっすねこれは。
 最後にこれは確実にジョージ・バーナード・ショーの言葉。

「為すべきことは熱を与えることではなく、光を与えることなのだ。」

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Posted by aozame